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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1206号 判決

控訴人 日興産業株式会社

右訴訟代理人弁護士 牧野芳夫

被控訴人 川崎テレビ株式会社

右訴訟代理人弁護士 青木平三郎

同 宇野文一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上及び法律上の主張、証拠方法の提出及び援用並びに書証の成立に関する陳述は、次につけ加えるほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

(主張)

一、控訴人は、次のように述べた。

(1)  (原因関係に基づく抗弁の補充)控訴人は、被控訴人が訴外東芝家庭電器月販株式会社より同社の製品を買い入れ消費者である各家庭に月賦販売をするにあたり、その斡旋をしたに過ぎず、被控訴人主張の(三)ないし(八)の約束手形も、右販売の手数料を控訴人に交付するというので被控訴人のため保証をする趣旨で被控訴人との共同振出としたものであるから、控訴人には求償を受けるような負担の分は存しない。

(2)  (保証手形の支払いによる求償債権に基づく相殺) 被控訴人は訴外東芝家庭電器月販株式会社に対し、次の約束手形四組を振出し、控訴人はこれを振出人のため保証した。

(一)金額 金十七万八百七十五円

満期 昭和三十七年二月二十五日

支払地並びに振出地 東京都豊島区

支払場所 全東栄信用組合東長崎支店

振出日 白地

(二)金額 金十六万円

満期 昭和三十七年三月二十五日

そのほかの記載事項は、(一)の手形と同じ。

(三)金額 金二万二千円

満期 昭和三十七年九月三十日

振出日 昭和三十七年八月十四日

そのほかの記載事項は、(一)の手形と同じ。

(四)金額 金七万四千三百五十円

満期 昭和三十七年十月十五日

そのほかの記載事項は、(一)の手形と同じ。

右約束手形四組合計金四十二万七千二百二十五円につき、控訴人は、前記訴外会社の請求により、保証人としてこれを支払ったので、被控訴人に対し右と同額の求償権を取得した。

よって、被控訴人主張の本訴請求債権と対等額において相殺する。

二、被控訴人は、控訴人が主張する右約束手形四通につき、共同振出人として署名したことは認めるが、それは控訴人の右訴外会社に対する債務の支払いを保証するためにしたものであるから、被控訴人にその求償を受ける義務はない、と述べた。

(証拠方法等)〈省略〉

理由

一、被控訴人が請求の原因として主張する事実は、保証の点を除き、当事者間に争いがない。

二、控訴人の抗弁について。

(1)(原因関係) 控訴人は、被控訴人主張の(三)ないし(八)の手形に控訴人が共同振出人となっているのは被控訴人が商品代金支払いのため振り出したものを控訴人において保証した趣旨である旨抗争するところ、右の主張に沿う当審における控訴人代表者本人の供述は後記認定の事実に照らして措信することができないし、そのほか、その主張を認めるに足る証拠がない。かえって、前記一の当事者間に争いのない事実と成立に争いのない甲第一ないし第八号証の各一ないし三、同第十一号証の一、二、乙第五号証、当審における被控訴人代表者本人尋問の結果により成立を認める甲第九、第十号証、当審における被控訴人代表者本人並びに控訴人代表者本人(但し、一部)の各尋問の結果をあわせ考えると、控訴人代表者原田経雄は、かつて被控訴人方に勤務し、被控訴人が取扱店となっていた訴外東芝家庭電器月販株式会社の商品の販売の業務に従事していたが昭和三十七年初め被控訴人方を退社し、控訴人会社を組織して代表者となり、被控訴人に申し出て右の取扱商品の月賦販売契約の仲介に従事して来たが、その仲介により成立した月賦販売に基づく代金は、右訴外会社において直接集金することとなっていたところ、控訴人において集金する権限がないのにその集金をし、右訴外会社に交付しなかったことが判明し、その交付を求められ、これを控訴人より右訴外会社に直接交付することを約し、その一部金額の支払いのため被控訴人主張の(三)ないし(八)の手形を控訴人の単独名義で振り出そうとしたが、その際、控訴人の信用度の問題で右訴外会社の受け入れるところとならず、同訴外会社と長年取引のある被控訴人の保証を条件に同訴外会社が受領することとなり、被控訴人においても、その保証を承諾した結果右両名が共同振出人として署名した右(三)ないし(八)の手形が振り出された事実が認められるのであって、被控訴人主張の(三)ないし(八)の手形は、原因関係においても被控訴人において控訴人の右訴外会社に対する支払い債務を保証したものであるから、控訴人のこの点に関する主張は採用することができない。

(2)  (相殺の抗弁)

(イ)(リベイト債権に基づく相殺) 控訴人は、被控訴人において控訴人の販売取扱額に応じてリベイトを支払う約があり、その額は金八十万円に達する旨主張するところ、当審における控訴人代表者本人(但し、一部)並びに被控訴人代表者本人の各尋問の結果によると、控訴人が前記訴外会社の商品の月賦販売契約を成立せしめた場合には、販売取扱額に応じて一定の率で報酬金を支払う約定があったが、販売代金がすべて同訴外会社に入金されることが条件であったこと、控訴人において月賦販売した右の商品代金の清算がついていないことが認められ、さらに、その主張のリベイトが金八十万円となることについての証拠はないので、この点に関する控訴人の主張は採用できない。

(ロ)(保証手形の支払いによる求償債権に基づく相殺) 控訴人は、その主張の(一)ないし(四)の手形は被控訴人の支払債務について保証したものである旨主張するけれども、この主張に沿う当審における控訴人代表者本人の供述は後記認定の事実に照らして措信することはできないし、成立に争いのない乙第一ないし第四号証の記載によると同号各証の約束手形は控訴人及び被控訴人の共同振出にかかるものではあるが、その原因関係においては、後記認定の事実のように被控訴人の債務につき控訴人が保証したものと認められないので、これをもって控訴人の主張を認めることはできないし、そのほか、控訴人主張の事実を認めるに足る証拠はない。すなわち、控訴人主張の(一)ないし(四)の手形は、前記二の(1)に挙示した証拠と成立に争いのない乙第一ないし第四号証をあわせ考えると、前記二の(1)で認定した被控訴人主張の(三)ないし(八)の手形と同じ趣旨で振出されたものと認められるから、控訴人主張の(一)ないし(四)の手形を控訴人において訴外東芝家庭電器月販株式会社に支払ったとしても、被控訴人に対し求償権を取得することはできない。したがって、この点に関する控訴人の主張は採用できない。

以上、控訴人の抗弁は、いずれも採用できない。

三、右の事実によると、控訴人は、被控訴人に対し、被控訴人主張の各手形金額並びにこれに対する(一)の手形については支払いの日以後(二)ないし(八)の手形については各満期以後支払済みに至るまで年六分の割合による法定利息を支払う義務がある。したがって、右の範囲で、被控訴人の本訴請求を正当として認容した原判決は相当である。

よって、本件控訴は理由がないから棄却し、〈以下省略〉。

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